「投資のためにはやっぱり貯金が必要ですか?」と専門家に聞いてみた

【画像】お金とビジネスパーソン

フィデリティ退職・投資教育研究所の調査(2015年7月)によると、老後に必要な資金(公的年金以外)は、平均3078万円と考えられています。定年退職金の大学卒平均額が1941万円(2013年)なので、その底上げはありますが、それ相応のお金を貯めておく必要はあるでしょう。もし貯金ゼロでも、平均受給月額約21万円(2014年)の年金があれば大丈夫、という見方も間違いではないものの、今後2割程度のカットが予想されるなか、安心とまではいい切れません。

現在、銀行の定期預金の平均利率が0.015%、普通預金の平均利率は0.001%です。この超低金利時代に、老後の生活資金を貯めるには、投資が有効なツールになることは間違いありません。しかし、投資でお金を増やすにしても、元手となるお金は必要です。いったいどのくらいお金が貯まった段階で、投資をスタートすべきなのでしょうか。

「銀行の利息が少ないから投資」はあまりに無計画

日本証券業協会「証券投資に関する全国調査」(2015年)によると、保有する有価証券の合計額で最も多いのは、年収400〜500万円の人で100〜300万円(26.9%)、続いて10〜50万円(16.9%)、50〜100万円(13.8%)となっています。日本の年間平均給与が420.4万円(2015年、国税庁)であることを考えると、一般的なサラリーマンの約7割は、投資にまわす資金が300万円に満たないということになります。

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投資額は年収にかかわらずバラけていて、どのくらいの金額から始めるのが手ごろなのか、このデータからはちょっと判断がつきません。とはいえ、銀行に預けておくだけでは“スズメの涙”ほどの利息しか得られないことはわかっているので、正しい答えがないなら、手もとにある分から投資にまわしてもいい気がしてきます。実際、上のデータを見ても、平均的なサラリーマンの3割近くが50万円未満という金額で投資を行っています。

でも、どうやらそれは無計画すぎるみたいです。ファイナンシャルプランナーの深野康彦さんは、著書『これから生きていくために必要なお金の話を一緒にしよう!』(ダイヤモンド社)で、「金額の多さではなく、株式や投資信託などへの投資は『余裕資金』で行う気持ちを持つことが大切です」とアドバイスします。

「元本が保証されていない投資信託などの金融商品は、お金が必要なタイミングで元本を上回っている保証はなく、日常の生活やいざというときのための備えとしては、その役割を果たせません。使い道が決まっていない、あるいは10年や20年先といった老後などに使うための『余裕資金』を、投資信託などの投資にまわすべきです」

投資は「余裕資金」をつくってから

なるほど。すぐに使う必要が出てきそうなお金は、投資には向かない、と。

とはいえ、「家計の金融行動に関する世論調査」(2016年、金融広報中央委員会)の2人以上世帯では、30.9%が「金融資産を保有していない」と答えています。年齢別に見ると、30代で31.0%、40代で35.0%、50代で29.5%の人たちが、貯金ゼロ。この結果を見ると、「余裕資金」のねん出はそう簡単でもなさそうです。

「それだけに、まずは元本が保証された金融商品での貯蓄を習慣化し、ある程度資産が増えた段階で、収益率の高い金融商品に投資を行い、老後の資金をつくっていくことが重要になります」(深野さん)

すぐに投資をせずに、貯蓄から始めることは、投資に伴うリスクヘッジという側面でも大切だとか。深野さんは著書でこう書いています。

「投資信託や外貨金融商品は年々多様化し、複雑になっています。あまり勉強せずに、いきなり投資してしまえば、失敗してしまうことも大いにありえます。貯蓄のあいだに、少しずつ勉強していくことをおすすめします」

3つの「ム」を避ける

老後の資金づくりの最初の一歩となる貯蓄について、深野さんは「お金を貯めることに裏ワザはなく、地道にコツコツと積立貯蓄を行っていくしかない」とキッパリ。毎月一定額を積み立てる「積立貯蓄」を長く続けるには、ムリ、ムダ、ムラの3つの「ム」を避けることが大事だとか。ここで簡単にご紹介しましょう。

(1)ムリのない金額で始める

積立貯蓄を行った経験がないと、やる気だけが前面に出てしまい、毎月の家計収支を無視した、高額な積立貯蓄をスタートしてしまいがち。その結果、日々の生活に苦しくなり、せっかく貯めた積立貯蓄に手を出すことになってしまいます。最初は少ない金額で始めて、余裕が出てきたらその金額を増やしていく、という形が長続きするようです。

また、目標額もいきなり1000万円などと高く設定せずに、100万円程度に設定し、クリアするごとに増やしていくのがいいでしょう。

(2)ムダな仕組みをつくらない

避けたいのは、いわゆる「手動積立」です。最近は、パソコンやスマホがあれば簡単に手動積立できますが、それでも「なんとなくメンドウで・・・」と、先送りしてしまったりするものです。積立貯蓄を長く続けるには、手間をかけずに積立できる仕組みをつくる必要があります。勤務先にある社内預金や財形貯蓄を優先し、それらが勤務先にない場合は、給与振込口座からの自動引き落としを利用するのがよいでしょう。

(3)ムラをなくす

「友人の結婚式に出席してお金を余計に使ったから、今月は積立をお休みしよう」といった具合に、ムラのある貯蓄を行っていると、お金は一向に貯まらないものです。給与口座からの自動引き落としなら、ムラのある積立は避けられそうですが、それでもいつの間にか使い込んでしまって、残高不足で1か月パス、といった事態も考えられます。給与振込日と引き落とし日のタイムラグはできるだけなくしたほうがいいでしょう。

積立で貯めた貯蓄は、選び抜いた定期預金に

積立貯蓄である程度お金が貯まったら、いよいよ投資へ・・・え、まだ気が早い? 深野さんが言うには、「次のステップは定期預金です」。「定期預金? なにかの間違いでは?」と、首をかしげる人も多いはず。冒頭で触れたように、2016年末現在、定期預金の平均利率は0.015%。100万円預けても1年で150円しか増えないのです。

「低金利時代でも、金利が高い定期預金はあります。積立定期にほったらかしにするのではなく、少しでも増やす気持ちを持ってください。積立貯蓄はお金を“貯める”ためのシステムで、お金を“増やす”ことには向いていないのです」(深野さん)

ちょっと調べてみましょう。大手都市銀行の定期預金の利率は、やはりおしなべて0.01%。けれども、確かに、なるほど。ある地方銀行のインターネット支店は「スーパー定期3年もの」の利率が0.27%。別のインターネット専業の信託銀行も、3年もので0.20%とそれに次ぐ水準。もし300万円を預けるとすると、普通預金なら利率0.01%で年300円しか増えないところが、利率0.27%だと年8100円(ともに税引き前)。かなりおトクであることがわかります。

日銀によるマイナス金利の導入で、民間金融機関の金利引き下げが続く可能性は高いと見られるなか、「ネット銀行など、金利を高く設定している定期預金に預けることは、リスクヘッジの意味でも有効です」という深野さんの指摘には、思わず深く頷いてしまいます。

固定費を削らないと投資はムリかも

投資向けの資金を確保するためには、積立貯蓄だけでなく「生活の見直し」も大切になってきます。特に、投資のプロの方々が口をそろえるのは「固定費の見直し」です。皆さんは「自動車費」「保険料」「住宅費」といった費目について、自分は絶対ムダ使いしていないと言い切れますか。

ちなみに、私は投資を始めるにあたって、大手携帯会社との契約をやめ、格安SIM(=格安料金で利用できる通信サービス)への切り替えを行いました。これまで平均8500円ほどだった月額料金が1600円まで激減し、年間約8万円のスリム化に成功しました。この浮いた金額を積立貯蓄にまわしたかどうかは・・・後日お教えしましょう。

さて、積立貯金や定期預金で元手をつくり、固定費の見直しを済ませ、自分のなかで「余裕資金」ができたら、いよいよ「投資」という次のステップに進んでいきましょう。

(文・永峰英太郎)

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