老後サバイバルにはお金がかかる!いま知っておくべき医療・介護費のリスク

老後の医療費に対する不安が高まっています。「老後とお金に関する調査」(2016年、日本FP協会)によると、「お金にまつわる悩み」について、「老後の医療費や介護費がいくらかかるかわからない」が37.3%と、「貯蓄ができない」(32.3%)、「年金がもらえるのか心配」(31.3%)を抑えてトップになっています。

【グラフ】お金にまつわる悩みについて(複数回答)

かつて高齢者(70歳以上)の医療費の自己負担は、かなり低く抑えられていました。1973年1月からの10年間は、高度経済成長を背景に、なんと自己負担ゼロ。83年2月から自己負担が復活しますが、いまに比べると微々たるもので、外来1か月400円、入院1日300円(2か月限度)でした。2001年1月に1割負担の定率制が導入され、現在では70歳未満が3割負担、75歳以上が2割負担、75歳以上は1割負担となっています。

「生活保障に関する調査」(2016年、生命保険文化センター)によると、「医療費は公的医療保険だけでまかなえる?」というアンケートに対し、「まかなえるとは思わない」(51.4%)が「まかなえると思う」(44.8%)を上回っています。この10年ほどで公的医療保険に対する信頼は高まってきているものの、いまだに半数以上は疑問符をつけているわけです。

【グラフ】公的医療保険に対する考え方

「高額療養費制度」はかなり使える!

こうしたなか、民間医療保険の保有契約件数は右肩上がりで推移しています(一般社団法人生命保険協会「2016年版生命保険の動向」による)。この民間医療保険の人気に対して、否定的な意見を述べているのが、『医療保険は入ってはいけない!』(ダイヤモンド社)の著者で、ファイナンシャルプランナーの内藤眞弓さんです。

「各保険会社は、メディアやパンフレットなどを通じて、病気になるとどんなに医療費負担が重いか、あるいは、公的医療保険では賄えない費用がどんなに高いかを強調しており、それを鵜呑みにして、医療保険に加入する人が多くいます。しかし、そんな保険会社のうたい文句に乗ってはいけません。公的医療保険の高額療養費制度を使うことで、70歳以上の場合で、100万円の医療費が4万円程度で受けられるのです。現役世代でも9万円弱です」

私事ですが、じつは私の母親も助けられました

ちなみに、私の母は、3種類の民間医療保険に入っていました。末期がんが発覚し、1か月半入院したのちに亡くなりましたが、その医療費を支払ったときに思ったのは、「え、こんなに安いの?」ということでした。

その一番の理由は、内藤さんが指摘する「高額療養費制度」の存在でした。その内容は、70歳以上の高齢者は、入院時で4万4400円、外来で1万2000円(いずれも月額)を超える医療費は支払わなくてよいというもの。現役世代でも、ひと月あたりの入院時の自己負担限度額は、標準報酬月額28万〜50万円の方で「80,100円+(総医療費−267,000円)×1%」、月額53万〜79万円の方で「167,400円+(総医療費−558,000円)×1%」となります。

この制度のおかげで、母の医療費の自己負担額は11万2800円で済みました。差額ベッド代(=個室など特別療養環境室の使用料金)や食費、先進医療費は、適用外です。食費の自己負担額は現在1食360円(2018年4月からは460円)。母は45日間の入院で、総額約16万円を支払いました。民間医療保険に入らずとも、毎月3000円を3年半貯金していれば支払える金額です。

「でも、先進医療費は保険対象外でしょう?」と、思われるかもしれません。確かに、民間医療保険のパンフレットなどには、そうした文句が踊っています。

「こうしたパンフレットを見て『公的医療保険では、最新のいい治療は受けられないんだ』と思っている方が多いようです。しかし、これはまったくの誤解で、日本では相当高度な治療が公的医療保険で受けられます。先進医療は、保険の対象にするかどうかを評価する実験段階の医療であり、決して『夢の治療法』ではないのです」(内藤さん)

公的介護保険はけっこう頼りになる

老後の医療費に加え、介護費用についても、不安を抱いている人が多くいます。前出の「生活保障に関する調査」によると、介護費用を公的介護保険で「まかなえると思う」は10.5%、「まかなえるとは思わない」は82.7%と圧倒的な開きがあって、国民が公的介護保険に寄せる期待は薄いことが明らかになっています。

【グラフ】公的介護保険に対する考え方

しかし、実際には公的介護保険だけでも、さまざまな介護サービスを受けられます。65歳以上で、介護が必要だと認定を受けた場合(=要介護認定)、自己負担額は1割(所得によっては2割)。要介護は「要支援1〜2」と「要介護1〜5」の7段階に分けられ、それぞれサービスの利用限度額が変わります。たとえば、要介護3の限度額は月26万7500円。うち1割が自己負担額です。

しかも、公的医療保険の高額療養費制度と同じように、公的介護保険にも「高額介護サービス費制度」があり、1か月の自己負担額が3万7200円を超えた場合(高所得者は4万4400円)、それ以上を支払わなくてよいのです。

日本の公的医療保険や公的介護保険は、私たちが想像する以上に充実していることをおわかりいただけたでしょうか。毎月安くない保険料を払っているだけの見返りはあるのです。

限りあるお金の使いみちをよく考えて

フィディリティ退職・投資教育研究所の調査によると、老後に必要な資金は、公的年金以外で平均3078万円と考えられています。いま支給されている公的年金は、厚生労働省のモデル世帯(夫は40年間会社員で平均月収34.8万円、妻は専業主婦を想定)で、月21.8万円ですが、今後は約2割のカットが予想されています。

老後の生活資金に欠かせない退職金も、この10年間で約500万円減っているというデータがあります。こうした現実を見れば、老後の生活資金を周到に準備しておく必要があることは明らかです。もはや、高度成長期やバブル経済の残り香を嗅いで生きていける時代ではありません。

そして、世界に先んじて、私たちが足を踏み入れつつある超高齢社会。ここまでその有用性をご説明してきた公的医療保険や公的介護保険も、将来にわたって万全とは言い切れません。たとえば、介護保険の自己負担額は一律1割でしたが、2015年8月より、年金などの合計所得金額が160万円以上の高齢者(単身で年金収入のみの場合、280万円以上)は、2割負担に引き上げられています。また、頼りになる高額療養費制度も、一定の所得のある高齢者については、自己負担額を4万4400円から5万7600円に引き上げる方針を、国は打ち出しています。

今後は、こうした超高齢化社会を迎える日本の現状を考慮しつつ、公的の医療保険や公的介護保険に足りない部分を、民間の保険でフォローする形にとどめ、その分の浮いたお金を、老後の生活資金の積み立てにまわすべきではないでしょうか。「限りあるお金を、限りある目的に縛りつけるのはやめるべき」(内藤さん)なのかもしれません。

(文・永峰英太郎)

この記事が気に入ったらシェアお願いします!