「節約できない人は、貯金ができない、投資もできない」これだけの根拠

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フィディリティ退職・投資教育研究所のアンケート調査によると、サラリーマンが老後に必要と考えている「公的年金以外の必要資金」は、平均3078万円――。

この金額をまかなう頼みの綱である退職金は、「就労条件総合調査」(厚生労働省)によると、大卒で平均1941万円(2013年)。この数字をもとにすると、大卒の平均的なサラリーマンが老後に備えて準備すべきお金は、必要資金から退職金を差し引いた約1000万円。もし、転職など何らかの理由で退職金が半分(約970万円)しかもらえないのなら、準備すべきお金は約2000万円ということになります。

1000万円という大金を貯めるのは、至難のワザのように思えます。しかし、35歳から始めて65歳になるまでの30年間、毎月2万7800円を貯金できれば、利子ゼロでもたどり着ける金額です。2000万円であれば、毎月5万5600円の貯金が必要です。

さて、まわりの人たちはどうしているのでしょう。「家計の金融行動に関する世論調査」(2016年、金融広報中央委員会)によると、「老後の生活資金のために貯金をしている」という人の割合は、69.1%と高めです。フィディリティ退職・投資教育研究所のアンケート調査によると、退職後の生活に向けて準備している金額は、2010年の平均515.6万円から、2016年の760.1万円へと増えました。

【グラフ】サラリーマンの退職準備額の推移(2010-2016年)

その一方で、「金融資産ゼロ」の世帯が30.9%と、10年前の22.2%から大幅に増えているのも現実です。

収入が多い人がたくさん貯金できるとはかぎらない

なぜこんなふうに、貯蓄が「できている世帯」と「できていない世帯」が分かれてしまうのでしょうか。「貯蓄できるほどの収入がないからに決まっているだろう!」という声が聞こえてきそうですが、『やっぱりサラリーマンは2度破産する』(朝日新聞出版)の著者で、ファイナンシャルプランナーの藤川太さんは「それだけではありません」とキッパリ否定します。

藤川さんが運営する「家計の見直し相談センター」に相談しに訪れる家族は、年収1000万円を超える所得層も多いのだとか。

「年収1500万円までのご家庭は、所得の多寡にあまり関係なく、お金が貯まらない悩みを抱えているケースが意外と多いんです」

藤川さんは以前、ある会社で約30世帯の家計診断を担当したことがあります。同じ事業所に勤める世帯で、いずれも属性だけでみると同じような家庭でしたが、試算をしてみると、60歳時の家計の姿が大きく違うことに驚かされたと言います。

「数年後には貯蓄が尽きてしまうご家庭もあれば、60歳時に貯蓄が1億円を超えるご家庭もありました。つまり、平均的な年収であっても、やり方次第でお金を貯めることは十分可能だということなんです」(藤川さん)

減らすべきは「やりくり費」ではなく「固定費」

やり方次第・・・。では、貯蓄ができている家庭は、どんな「やり方」を実践しているのでしょうか。藤川さんはこう言います。

「貯蓄ができているご家庭の大きな特徴は『支出が少ない』。つまり節約がしっかりできているんです。そして、その節約のポイントは、家計の『やりくり費』ではなく『固定費』を減らすことにあるのです」

家計の「固定費」とは、家賃や住宅ローン、車のローン、民間の保険料、通信費、光熱費といった、一度選択したら通帳から定期的に引き落とされるようなお金のこと。一方、日々の食費や小遣いなど、財布から都度出ていくお金は「やりくり費」と呼びます。

藤川さんは「『節約』というと、まずは『やりくり費』から削る人が多い」と指摘します。新生銀行が1979年から定期的に行っている「サラリーマンのお小遣い調査」によると、バブル景気真っ最中だった1990年のお小遣いは月7万7725円。それが2016年には月3万7873円と、ほぼ半分まで減っています。なるほど、確かに。皆さん、苦しい時代に合わせて「やりくり費」を減らしているわけですね。

【グラフ】サラリーマンの平均お小遣い額の推移(1990-2015年)

一方、固定費の主役の一つである、生命保険(民保)の世帯年間払込保険料は、「生命保険に関する全国実態調査」(生命保険文化センター)によると、1991年が41万9000円だったのに対し、2015年は37万円と、お小遣いほどには減っていません。

「景気がいいと、車や生命保険などについて『いいものを選ぼう』と考えがちです。だから固定費が増えることになります。そして景気が悪くなったとき、この固定費の負担が重くのしかかってくる。これでは、お金が貯まるはずもありません」(藤川さん)

「やりくり費」の節約効果は薄い

さて、ここで質問です。大手企業の夏のボーナスは、2016年まで4年連続でプラスになっています。皆さんはこの4年間、夏のボーナスをどれだけ貯蓄にまわしましたか? もしかして「増えた分、使っちゃいました」という人も多いのでは?

じつは、私にもそんな経験があります。景気がよい時期、自分の身の丈に合っていない車を購入し、その後のローンで苦しんだ過去を持っています。当然、お金を貯めることなんてできませんでした。食費などの「やりくり費」を必死に削りましたが、あまり効果はありませんでした。それもそのはず。藤川さんはこう解説します。

「食費や小遣いなどの『やりくり費』は、その多くが少額のため、節約効果はあまり期待できないんです。それに、食費などを抑えると、生活レベルの低下を強く実感することになり、いつのまにかリバウンドしてしまうんです」

では、「固定費」の節約だとどうなるのでしょう。

「たとえば、生命保険を見直せば、保険料を月数万円減らせることもあります。減らしても生活レベルに影響しにくく、さらに、その効果はずっと持続します。貯蓄ができている家庭は、固定費をうまく削っているんです」(藤川さん)

退職者の半数が「定年前に貯めておけばよかった」

貯蓄を増やす方法は、いたってシンプルです。収入を増やすか、支出を減らすか、運用で増やすしかありません。収入を増やしたいのは誰しも同じですが、足もとの景気を見るかぎり、簡単でないことは明らかです。実際、日本生命保険が「平成28年の抱負・期待」と題してインターネットを通じて行ったアンケート調査によると、(前年末時点の予想として)2016年の給料は「変わらない」との回答が65.4%を占めています。

では、運用で増やせるかというと、そもそも資金がなかったらできるはずもありません。だからこそ、まずは藤川さんの言うように、固定費の見直しに重点を置いて支出を減らすしかないのです。手もとの資金さえ用意できれば、運用や貯金にまわして増やすことも可能になります。

フィデリティ退職・投資教育研究所が、退職者8000人を対象に行ったアンケート調査(2015年)によると、「定年前にやっておけばよかったこと」のダントツ1位は、「退職後の生活に心配しないだけの資産形成」(47.3%)。この切実な後悔の言葉、心に響きませんか。私には響きました。いますぐ固定費に重点を置いた節約、始めたいと思います。

(文・永峰英太郎)

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