情報でお金を増やす!多忙なビジネスパーソンのための明日からできる「思考法」 

【画像】国際経済と新聞のイメージ

現在、銀行の定期預金の平均利率は0.015%。1000万円を預けると、1年で1500円増えます。また、普通預金の利率は平均0.001%。1000万円預けて、1年でわずか100円の利息です。この数字が示す現実に目を向ければ、もはや銀行や郵便局の預貯金だけで老後の資金を増やすのが難しいことは、誰の目にも明らかだと思います。実際、お金に関する専門家の多くが「金融資産を増やしたければ、今後は投資が必須」と口をそろえます。

そんな現実を目前にしながらも、私たちの多くは、投資に対して二の足を踏んでいます。「フィデリティ退職・投資教育研究所レポート」(2016年3月)の調査によると、老後のために特に何もしていない人が4割超。投資も含めた資産運用を行っているのはわずか1割です。

【グラフ】老後のための資産形成として行っていること

さらに、投資をしていない人に対し、その理由を聞いたところ、一番多い回答は「資金が減るのが嫌だから」(36.5%)でした。そのほか「何をすれば良いのかわからないから」(24.9%)といった意見もあります。

【グラフ】投資をしない理由の変化

一方で、時代の変化を先読みし、すでに投資を始めて資産を増やしている人もいます。前出の「フィデリティ退職・投資教育研究所レポート」の2015年3月版によると、退職金を投資にふり向けた人の約7割が「評価益を得た」(=保有する資産の価格が、購入時より値上がりしたために利益を得た)そうです。もっと言えば、世界の投資のプロのなかには、かなり多額のリターンを挙げている人も少なくありません。

プロの投資家が実践する「シミュレーション思考」

さて、こうした個人差はどこから生まれてくるのでしょうか。

外資系運用会社のヘッジファンドマネージャーである塚口直史さんは、リーマン・ショック(2008年)に始まる世界的な金融危機、ギリシャ危機(2010年)といった激震のために、世界の多くの投資家が辛酸をなめるなか、50%超という驚異的なリターン(投資収益率)を挙げた人物です。

塚口さんは、著書『情報を「お金」に換えるシミュレーション思考』(総合法令出版)のなかで、「1日のうちのほとんどの時間を、情報収集とその分析に費やしたうえで、投資を行っている」と書いています。

要するに、情報収集と分析という地味な作業を積み重ね、「将来はこうなる」というストーリーを組み立てて予測し、そこに向けて、投資を行っているわけです。塚口さんは、こうした行動につながる思考を「シミュレーション思考」と定義づけています。

塚口さんは、直近の2015年にも50%以上のリターンを挙げ、米調査会社バークレイヘッジから世界第3位(グローバルマクロ戦略部門)として表彰されています。これはまさに、将来を見通すストーリーを紡ぎ出したからこその結果と言えるでしょう。

2013年、オバマ米大統領の「アメリカはもはや世界の警察官をやめるべきだ」という演説を聞いたとき、塚口さんは「歴史の大きな変化の訪れ」を感じたと言います。超大国アメリカによる一極政治経済体制が終焉を迎え、新興国主導の多極化世界が訪れると踏んだのです。実際にその予測をもとに、新興国の経済分析に重点を移し、そこから世界を見ていく形に抜本的に変えたことで、多額のリターンを実現したのです。

公開されている情報から分析する

ここまで読んだ皆さんはおそらく、「プロの人たちは、相当な情報源があるからこそそんな予測ができるのであって、素人には無理だよ」と思ったのではないでしょうか。

しかし、塚口さんは著書ではっきりと否定します。「私の情報源は、決して特別なものではなく、新聞や週刊誌など、公になっている公開情報がすべてのベースになっています」。

たとえば、塚口さんが歴史の変化を感じとったというオバマ大統領の演説は、日本でもニュースになったものです。もちろん、演説一つで何もかもがわかったわけではなく、それ以外のさまざまな情報の蓄積や組み合わせがあったからこそ、正しい予測が生まれたのでしょう。しかし、それも公開されている情報を分析した結果だ、と塚口さんは言うのです。私たちのような素人でも、公開情報を集めてストーリーをつくり、シミュレーションをくり返す「訓練」をするところまではできるはずです。

「何を基準に投資していいかわからない」が現状

たとえば、投資信託。「投資信託に関するアンケート調査報告書」(2016年、投資信託協会)によると、投資信託を購入する際に運用会社の何を重視するかについて、最も多かった答えは「わからない・特にない」(55.6%)で、続いて「運用力」が30.6%となっています(複数回答)。つまり、半数以上の人が、何を基準に投資していいかわからないという状況なのです。このままでは、資産を増やしてくれる実力のある運用会社を選べるとは、到底思えません。

【グラフ】投資信託購入の際の、運用会社の重視点

塚口さんのように、普段から自力で「将来を見通すストーリー」を考え、シミュレーションをくり返していれば、投資で大きなリターンを挙げられるかどうかはともかく、まずはやみくもに運用会社を選ぶ必要はなくなるでしょう。運用会社に頼る場合でも、しっかりと意見交換した上で、適確なパートナーを選ぶことが可能になるのではないでしょうか。

世界への好奇心、地政学、お金の歴史

さて、この「シミュレーション思考」を身につけるには、どうしたらいいのでしょうか。

塚口さんは、3つの柱が欠かせないと書いています。「世界(の国々)に対する好奇心」、政治・軍事の歴史である「地政学」、そして、私たちの経済生活の基盤をよく知るための「お金の歴史」です。それぞれを知っていれば知っているほど、未来について多くのストーリーを考えられるようになるというわけです。

たとえば、お金の歴史について、塚口さんは「海外絵画市場」の動きに注目することで、独自のストーリーをつくり上げました。(文字面にすると単純になりすぎるきらいはありますが)端的に言えば、海外の絵画市場で「史上最高値が続出すると、その後に必ず急激な景気後退が待ちかまえている」というものです。

実際、中国をはじめとする新興国の投資家が絵画市場を押し上げた2011〜15年は高額落札が重なり、その後中国の株式市場は大暴落。このストーリーをシミュレーションしていた塚口さんは、あらかじめ経済危機に備えるポジションを取っていたため、大きな利回りを得ることができたそうです。

断片的な情報をつないで考える

ここまで読んでも、「やっぱりプロの情報収集ルートは普通と全然違うんだろう」と思われる方が少なくないと思います。でも、すでに説明したように、塚口さんの情報源は公開されたものがほとんど。しかも、新聞や週刊誌といった、私たちが普段から目にするメディアが多いというのです。

国際運用を自ら手がけるならともかく、一般の日本人でこれから運用をやっていこうという人は、世界の金融ニュースを掲載している日本語の新聞1紙で十分、と塚口さんは言い切ります。また、「刻一刻と動く世界の情報をいちいちおさえる必要はなく」、資産運用という「情報収集の目的を絞ること」の大切さを強調します。

では、そうやって入手した情報を、どう分析したらいいのでしょうか。方法はさまざまあると思いますが、塚口さんの場合は気になる新聞記事を切り取り、それら「複数の情報がどういうストーリーで現在つながっているか、また今後つながっていくかということを考える」と言います。

素人ですが、ストーリーをつくってみました

皆さんのお役に立てるかわかりませんが、ここで私がストーリーづくりに挑戦してみたいと思います。

最近の私の気になるニュースは「審議6時間弱でカジノ法案の衆院通過」。同日のほかの紙面をめくってみると、「マイナス金利でタンス預金急増」という見出しが目に入りました。この一見無関係に見える2つの記事に、何かつながりはないだろうか。私は考えました。

そして、なるほど、わかりました。法案の成立でカジノが開設され、高齢者の方々がカジノに興じると、タンス預金が減る――。そんなストーリーが浮かび上がってきたのです。もしかしたら、日銀のマイナス金利政策は成功にはほど遠い状況で、だからこそ安倍内閣は、カジノ法案の成立を急ぐのではないか。

そんな馬鹿な、と皆さんお考えでしょうが、これはあくまでストーリーを生み出すトレーニングですから、気になさらないでください。塚口さんは、ストーリーを創ったら、第三者に意見も聞き、独りよがりにならないようにすることが大事だと言います。それに加えて、ストーリーは最低でも5つは用意したほうがいいとか。1つのストーリーが間違っていても、ほかのストーリーに活路を見いだせるからです。

考える訓練を毎日の習慣に

いかがでしょうか。実際のところ、プロの投資家のように、リターンにつながる精度の高いストーリーをつくることは簡単ではないでしょう。私が言いたいのは、塚口さんのようなプロの手法を真似るべき、ということではありません。多くの人がいまそうであるように、「どうしていいかわからない」ままにしておくと、いずれ散々な老後が待っているということなのです。

まずは、新聞を読みながら(もちろんネットニュースでもいいでしょう)、あるいは休日に「お金の歴史」や「地政学」などを学んで、想像できる未来の射程を広げること。その断片からストーリーを紡ぎだし、家族や友人、知人と意見交換してみる。そういう思考の訓練が、これからの先行き不透明な時代を生きていく上で、何かしらプラスになるのではないでしょうか。

もう一歩踏み込んで言えば、「投資に役立ちそうな情報」に目的をしぼって、新聞や週刊誌、ネットニュースなどに触れる習慣をつくってみてはいかがでしょう。自分と家族の将来のためだと思えば、決して苦にはならないはずです。

(文・永峰英太郎)

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