子育てはお金がかかる!ビジネスパーソンがいま知っておくべき教育費の現実

【画像】教育費のイメージ

いきなり私事で恐縮ですが、私は、幼稚園から中学までは公立で、高校と大学は私立に通いました。今日にいたるまで、自分の学歴について、何の疑問も持つことはありませんでした。そして、自分が子どもを持ったら、同じような道を歩ませたいと思っています。皆さんは、社会人になるまでどんな学校に通ってきましたか? お子さんにはどんな道を歩んでほしいと思っていますか?

私の友人で、公立の幼稚園に通う男児の父親である浅田真一さん(仮名、出版社勤務)は「自分は親父の母校でもある早稲田大学の出身。そのことを誇りに感じていますし、将来的には、自分の息子も早稲田に進んでくれるだろうと思っています」と話してくれました。

ベネッセ教育総合研究所の「第5回学習基本調査」(2015年)によると、高校まで卒業したいと答えた生徒は、小学生で16.9%、中学生で21.1%、高校生で2.6%。大学あるいは大学院まで卒業したいと答えたのは、小学生で34.1%、中学生で42.1%、高校生では83.3%と、いずれも2倍以上の開きが見られ、とくに高校生では7割以上が大学(院)進学を希望しているという結果が出ました。

【グラフ】小学生・中学生・高校生の希望する進学段階

高卒求人と大卒求人は1998年に逆転し、以降、高卒求人は急激に減っています。「高校を出れば大丈夫」という時代はとうの昔に終わり、いまの時代の子どもたちは多くが大学への進学を望むようになっています。

教育費は「なんとかなる」とはかぎらない

家計に余裕がないので、子どもには高校を卒業したらすぐに就職してほしい、という状況であっても、子は親の気持ちと裏腹に大学まで行きたがる。もはやそれが当たり前の時代です。私たちはそんな子どもたちの期待に応え、大学を卒業するまでの教育費を捻出できるのでしょうか。

前出の浅田真一さんは「自分の親も、僕と姉を大学まで進学させてくれたし、なんとかなるでしょう」と、高を括ります。そんな親の考えに対し、『子どもにかけるお金の本』(主婦の友社)の共著者で、ファイナンシャルプランナーの畠中雅子さんは「なんとかなると考える親御さんは多くいますが、資金計画なしに、誰でも簡単に子どもたちを大学まで出せるわけではありません。まずは、そのことを肝に銘じるべきです」と、ピシャリ。

「教育費は、子育て中のどの時期も負担になりますが、そのピークは大学時代。年間収支が赤字になるご家庭も珍しくないんです。その事実を知らず、そのときが来てから慌てる親御さんがけっこういらっしゃるんですよね。まずは、子どもが大学を卒業するまでにどのくらいの教育資金が必要になるのか、しっかり認識しておく必要があります」(畠中さん)

公立と私立で大きく異なる教育費

「子供の学習費調査」(2014年、文部科学省)によると、幼稚園(3年保育、以下同じ)から高校まですべて公立に通った場合の学費は527万2500円。すべて私立に通った場合は1771万512円です。オール公立とオール私立とのあいだには、じつに1200万円以上もの開きがあるのです。

【グラフ】学校種別学習費総額の推移(年額)

それでは、負担がピークに達するという大学の学費はどのくらいかかるのでしょうか。「国公私立大学の授業料等の推移」(2015年度、文部科学省)によると、国立大学の授業料は53万5800円、入学料が28万2000円、卒業までの合計額は242万5200円です。私立大学の場合、授業料が86万4384円、入学料が26万1089円、卒業までに371万8625円かかります。幼稚園から大学まで合算すると、オール国立でおよそ770万円、オール私立でおよそ2150万円かかる計算です。

ちなみに、同調査によると、私立の理科系学部の場合、授業料は104万8763円、入学料は26万2436円。医歯系学部の場合、授業料は273万7037円、入学料は103万8128円、そのほかに施設設備費が83万1722円かかります。医歯学部は6年制なので、修了までにおよそ2250万円もの費用が発生するわけです。

【グラフ】国立大学と私立大学の初年度学生納付金比較

中学まで公立で、高校と大学は私立に通った私は、学費だけで1074万7073円もかかったことになります。それだけではありません。大学時代は一人暮らしをしており、月7万円の仕送りをもらっていました。4年間で合計336万円です。さらに、私の姉は中学まで公立で、高校は私立。卒業後は保育科の専門学校(2年間で約200万円)に進学しました。合計すると約900万円。きょうだい合わせて2300万円以上の教育費を、両親は負担して今日にいたるのです。

受験料、通学費・・・学費以外にも支出はふくらむ

教育費は、デフレが続く日本の家計のなかで、時代に逆行して値上がりを続けている支出の一つです。教育費の相場が急激に下がる可能性は低いですし、進学を有利にするために早くから習いごとを始めさせたり、大学・大学院への進学を望む(あるいは就職できずに大学院に進学する)子どもたちが増えていることを考えると、教育費の負担はこれからも増えていくと思われます。

さらに、ここまで挙げてきたような費用は主に学費で、実際にはそれ以上の支出が発生します。日本政策金融公庫「教育費負担の実態調査結果」(2015年度)によれば、大学受験料や通学費、教科書・教材費などを含めると、高校卒業から大学卒業までに必要な費用は、国公立大学で約458万円、私立大学文系で約673万円、私立大学理系では約822万円。学費の2倍近くもの支出が発生することになります。

子どもの教育費を把握したことで、皆さんはどんな気持ちを抱いたでしょうか。私は「具体的な金額を知り、少し安心した」というのが本音です。「こんなリアルな数字、知りたくなかった」といった方もいるかもしれませんね。ファイナンシャルプランナーの畠中さん(前出)はこう指摘します。

「教育費については、学生時代の友人やママ友だちがどのくらいのお金をかけているかを見て、それを真似ようとしてしまう傾向が強いんです。でも、相手はもしかしたら、相当な富裕層なのかもしれません。見栄を張ると、家のお金は、どんどん教育費に吸い取られてしまい、老後の資金に手を出すことにもなります。教育費の相場を知り、その範囲内で収まるようにすることが大切です」

教育費は長い時間をかけてコツコツ準備する

それにしても、この膨大な教育費、いったいどうやって準備したらいいのでしょうか。畠中さんは「時間を味方につけること」とアドバイスしてくれました。

「元本保証の金融商品や貯蓄性のある学資保険も利用しつつ、長い時間をかけてコツコツ貯めていくことが、一番確実で楽にできる教育資金の準備の仕方です。また児童手当もできるだけ手をつけずに、将来の教育資金に回すことも大事です。もし、現時点でできていなかったとしても、今日これから始めればよいと思います」(畠中さん)

とはいえ、気がかりなこともあります。それは、教育資金と老後資金とのバランスです。「就労条件総合調査」(2015年、厚生労働省)によると、退職金はここ10年で約500万円も減っています。公的年金も、今後は2割程度のカットが予想されています。一方で、フィディリティ退職・投資教育研究所の調査によると、老後に必要と考えている「公的年金以外の必要資金」は、平均3078万円にも達します。私たちは年金や退職金が減っていくこれからの時代に、教育資金を準備するだけでなく、老後の資金も貯めなくてはならないのです。

ファイナンシャルプランナーの小屋洋一さんは、著書『いわゆる「当たり前の幸せ」を愚直に追いかけてしまうと、30歳サラリーマンは、年収1000万円でも破産します。』(東洋経済新報社)のなかで「子どもたちの教育費のために自分たちの老後が危険な状況になってしまうのがわかっているのなら、黙って指をくわえているのではなく、事前に策を講じておくべきではないか」と指摘したうえで、次のようにアドバイスしています。

「いまでさえカツカツの生活をしているご家庭で、お子さんの将来の教育資金も貯められない状況なのに、お子さんの習いごとにお金を使うことがおかしいのです」「仮に子どもたちを大学に通わせることによって、老後の資金に不安が生じるようであれば、大学の費用自体を子ども自身に負担させるのが一つの解決策になるのではないでしょうか。子ども自身が奨学金を借りてまかない、自身で返済するという方法は、欧米ではごく当たり前です」

私の両親は、私と姉を私立高校に、私を私立大学に進学させてくれました。それは親の努力のたまものであることは間違いありませんが、給料が右肩上がりで、年金や退職金をしっかり確保できていた時代だから可能だった、ということを忘れてはならないと思っています。これからの時代を生きる私たちは、親にできたから自分もできる、という安易な発想を捨て、しっかり現実と向き合って生きていく必要があるのではないでしょうか。

(文・永峰英太郎)

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