老後資金づくりの「切り札」確定拠出年金を使うべきこれだけの理由

【イメージ】老後生活

ここ最近、テレビや雑誌、書籍などを通じて「iDeCo」が取り上げられる機会が増えています。皆さんも「イデコ」というこの一風変わった名前を、どこかで耳にしたことがあるのではないでしょうか。

iDeCoの正式名称は「個人型確定拠出年金」です。文字面を見ただけでは、何が何だかわからないですよね。安心してください、私も同じです。

「年金」と言うからには、老後の資金づくりに何か役立つ仕組みのはず。ギモンを持つ皆さんを代表して、『誰も教えてくれなかった!「確定拠出年金」利回り20%の投資法』(宝島社)の著書で、ファイナンシャルプランナーの横山光昭さんに、いろいろ教わってきました。

加入できる対象が広がった

いきなりですが、iDeCoって何なんでしょう?

確定拠出年金は、年金資産の運用管理を加入者個人が行う制度のこと。自分が支払った掛金の額と、自ら運用した成果によって、将来の年金給付額が決まるそうです。

「60歳までのあいだに、毎月5000円以上(サラリーマンや専業主婦の場合は上限2万3000円、自営業は上限6万8000円)の決まった(=確定した)額を出して(=拠出する)、そのお金をもとに、自分で選んだ投資信託や定期預金などの金融商品を組み合わせて運用する制度のことです。60歳以降、運用して貯まったお金を年金、もしくは一時金で受け取れます。この確定拠出年金には『企業型』と『個人型』の2種類あり、後者の愛称が『iDeCo』なんです」

そもそも、確定拠出年金制度が始まったのは2001年だそうです。なぜいまになって、大きな盛り上がりを見せているのでしょうか。

「2016年までは、企業型と個人型に重複して加入することができなかったのですが、今年1月から、企業型に入っている会社員も個人型に加入できるようになったんです(一部例外あり)。加えて、公務員や専業主婦にも対象が広がり、ほぼすべての人がiDeCoに加入できるようになりました。いま盛り上がっているのは、この制度変更が理由ですね」

節税メリットが大きい

なるほど。公的年金や退職金に期待が持てない、むしろ不安が高まりつつあるいまの時代、老後の資金づくりに使えそうなツールではあります。ただ、毎月一定額を運用にまわすだけであれば、わざわざ新たな制度を使わなくても、投資信託や株式を自分で購入すればいいのでは。iDeCoを使うメリットは何かあるのでしょうか。

「もっとも大きなメリットは、毎年皆さんが払っている税金(所得税と住民税)が安くなることなんです。たとえば、課税所得が270万円(年収400万円程度)の会社員が、毎月2万3000円をiDeCoで積み立てたとしましょう。掛金の総額は年間27万6000円になります。課税所得が270万円の場合、所得税率は10%ですが、掛金については所得控除を受けられるので、年末調整で2万7600円が戻ってきます。翌年の住民税(一律10%)も同じく2万7600円安くなるのです」

なんと、1年で合計5万5200円もオトクになるとは! 「それだけではないんです。年金を受け取るときも、大幅な節税を期待できるんですよ」と、横山さん。

「iDeCoで積み立てたお金は60歳以降、年金として受け取るか、一時金(退職金)として受け取るか、2つの方法から選べます。前者の場合は『公的年金控除』、後者の場合は『退職所得控除』という優遇処置を、企業の退職金と同じように受けられるのです」

たとえば、退職所得控除の場合、新卒で就職した人が22歳から60歳まで38年間、iDeCoを使って積み立てたとしましょう。掛金拠出20年までは40万円、21年目以降は70万円が控除されるので、40万円×20年+70万円×18年=2060万円までが非課税になります。仮に運用がうまくいってこの控除額を上回っても、課税対象になるのは、はみ出した額の半分だけです(ただし、退職金が出る場合は、iDeCoによる積み立てと退職金が通算されます)。

つまり、iDeCoを使えば、掛金を拠出したとき、そして、年金を受け取るときと、ダブルで節税メリットを得られることができるわけです。老後資金を準備するためのツールとして、相当有利なしくみと言えるのではないでしょうか。

【画像】イデコ案内サイト

国民年金基金連合会による「iDeCoガイドページ」(http://www.ideco-guide.jp/)

目減りする公的年金を自助努力で補填

実際のところ、このiDeCoを活用すると、どのくらいの資産を貯めることができるのでしょうか。

「雑誌や本などでは、年5%、7%といった高い利回りを想定したシミュレーションが行われているのを見かけますが、あまりに現実的とは言えませんね。ここでは、年2%ほどで計算してみたいと思います。ある会社員が、30歳から毎月2万3000円を積み立てると、60歳を迎えるときには、元本だけで828万円。これに2%の複利が上乗せされ、その額は300万円超。総額1100万円以上貯まることになります。その間、所得税と住民税の控除も受けられるので、手元資金にも応分の余裕が生まれます」

なるほど。横山さんの説明を聞くかぎり、iDeCoにマイナスの部分は見当たらないようです。でも「おいしい話には、必ず裏がある」という言葉もあるし・・・。

「iDeCoは、これから公的年金が目減りしていくことが予想されるなかで、『プラスアルファの部分は自助努力で貯めてほしい』という、国からのメッセージが込められた制度です。とてもよくできた制度だと私は思っています。あえてデメリットを言うとすれば、掛金の上限が設定されている点くらいでしょうか」

60歳になるまで原則解約できない

フィディリティ退職・投資教育研究所が、現役サラリーマン1万人を対象に実施したアンケート調査によると、老後に必要なお金は、公的年金以外で平均3078万円という結果も出ています。老後の生活資金を満たすには、iDeCoだけではちょっと足りないかもしれません。

「iDeCoだけでなく、投資信託を運用したり、少しでも利率の高い定期預金を探したり、リスクヘッジの意味合いも含めて、資産の運用先を分けていくことは大事です」

なお、iDeCoを運用するうえで、前もって知っておくべきことがあります。それは「原則的に60歳になるまで解約できない」という点です(加入期間次第で受給開始年齢が若干異なります)。iDeCoは一見、投資性の強い制度に見えますが、あくまで年金資産を積み立てるのが本旨。短期的な解約は想定しておらず、60歳まで長期運用することを前提につくられています。

「iDeCoを使った資産運用を考える前に、突然のリストラや病気などに備えて、まずはきちんと目先の貯金をつくっておくことが大事です。iDeCoは原則途中解約できず、解約返戻金のような制度もないので、いざというときに立ち行かなくなってしまいます」

手数料が安い金融機関を選んで

また、実際にiDeCoを使って資産運用するとき、重要になってくるのが、運用をまかせる「金融機関」選びです。どの金融機関を選べばよいのでしょう。横山さんは、ポイントは「手数料の安いところ」と断言します。

iDeCoは、どの金融機関にまかせるかにかかわらず、「口座管理手数料」(初回の掛金から2777円、毎月の掛金から103円)と「事務委託先手数料」(毎月64円)は一律にかかりますが、「運営管理手数料」は金融機関によって違ってきます。もちろん、金融商品の運用に伴う信託報酬も、金融機関によってさまざまです。

「運営管理手数料は、金融機関によってかなり幅があり、年間6000円以上(30年間で18万円)も差が出てくる場合があるので、チェックは怠らないでください」

皆さんは、iDeCoにどのような印象を持たれたでしょうか。私の率直な感想としては、先行きの見えない時代を生きる私たちにとって、あとから足りなくて困るくらいなら、否応なしに老後資金づくりに向かわせてくれる一種の「縛り」はあっていいような気がしています。個人的には、「60歳まで解約できない」という点が、浪費がちな自分の性格に合っているとも思いました。

目減りが予想されている公的年金に頼り切ることなく、iDeCoを活用して積極的に補っていくことは、現時点で、理にかなった方法ではないでしょうか。

(文・永峰英太郎)

※本文記載の投資商品(確定拠出年金など)には値動きがあり、元金を割り込むことがありますのでご注意ください。

この記事が気に入ったらシェアお願いします!